母の夢と「むつみ」さん

本当に久し振りに母の夢を見た。母が何かの映画かお芝居の役に選ばれるのが嫌で、逃げまどっている場面だった。もともとその役に決まっていたが、監督が決めかねて、別の女性を呼び出している最中に、母が新しく買った着物を着てきたところそれが気に入ったらしい。わりとあっさりとした青色の縦じまの柄で、そんなに素晴らしい柄とは思えなかったが、その着物全体にオレンジ色のグラデーションが重なった模様で覆われた感じになっている。まあ夢なのでそのへんがあいまいなのだが。監督の腹心の女性とその手下に追われて逃げるのだが、家と家の間の小さな隙間に隠れている。そんなところに隠れたら着物が汚れてしまうのにと思いながら、夢は終わってしまった。母はもうそんなにあに若くなかった。50から60代くらいだろうか。やはり母と言えば着物姿が印象に残っていたんだろう。

続けて母の友人であった「むつみさん」をお見舞いに行った情景を思い出した。もうこれが最後の別れだと二人ともわかっていた。母と二人で病室を出た後に、むつみさんがドアをあけて追いかけてきた。だが私はむつみさんがその時、何を言ったのかしかと覚えていない。ただ、呼びかけて声をつまらせて涙ぐんだ情景だけは今も心に残っている。頼まれて彼女の息子さんに家庭教師をしたことがあって、何度か私も個人的に話をした。母の数少ない友人の一人だった。母も分かれた後に泣いていた。今までにあの場面は何度も思い出すことがあったが、きっと私にとっては忘れられない人なのだろう。母と一緒に出てきてくれた。この場面も気持ちも誰も人と分かち合うことができないが、人それぞれに皆そういう場面があるんだろうと思う。残念ながら母とむつみさんがどういう会話をしたのかを覚えていない。感受性のなかった自分に今更ながらため息が出る思いだ。

本を1冊だけじっくり読む

少し前まで、気に入った本は、主に時代小説を予約しては読んでいた。借りれるようになった本が重なって、図書館のカウンターで数冊まとめて借りることもあった。当然だが2週間の間にそれを読まないと返却期限までに間に合わない。結構プレッシャーである。読み終えないまま返してしまうこともあった。本の貸借に図書館に出向くことも面倒なので、本を沢山借りることを止めてみた。今まで読みたい本はすぐに予約をかけていたが、そこを我慢した。今一冊だけ手元にあって、それだけを読むようにしている。さっさと読み進める本ではないが、プレッシャーを感じることなく読めて気持ちが落ち着く。