主家の名誉を守る 姫の一分_若鷹武芸帖(3)(岡本さとる)から

文庫本カバーより

<主家の名誉を守るためなら財産も命も投げ出して構わない、ここにしびれます。>

 主筋の姫を罵られて、彼もまた怒りを爆発させた。主家の屋敷からもらい受けた植木で始めた店である。鈴姫のために潰してしまうなら本望だ。「詫びを入れるのは、お前の倅の方だろう!」下から見上げて一喝すると、「武家奉公で覚えたのは、大きな顔をすることではない。いざとなった時に、命を捨てる覚悟だ。道理を曲げて、どこまでも絡んでくるのなら、このおれも、いささか腕に覚えのある身だ。いつだって相手をしてやろうじゃねえか!

そう思うなら、斬れ。斬るがよい。どうせ生きていたとて詮なき身じゃ。

命へ執着しない いつか命は必ず終わる この確かな事実への受け止め方と恥ずべき生き方をしない、こう思うことのできる武家が数多くいたのが凄い

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