姫の一分_若鷹武芸帖(3)(岡本さとる)

文庫本カバーより

 このシリーズ3冊目。<図書館サイトの紹介>薙刀を遣える女子を捜すよう、将軍徳川家斉から公儀武芸帖編纂所頭取・新宮鷹之介に命が下る。編纂方の武芸者2人の助で調べ始め、苦難の末に薙刀を遣う女武芸者に辿り着いたところ、鷹之介が事件に巻き込まれ…。岡本さとるさんのシリーズの中で「剣客太平記シリーズ」「取次屋栄三シリーズ」の主人公はどちらも決まった主君をもたない、言ってみれば浪人剣士だが、この鷹武芸帖の主人公の鷹之助は旗本で、若くハンサムと随分設定が違う。

主人公の人柄の良さが、岡本さとるさんの作品の魅力

 読み進むと鷹之助の人間的な魅力が周りの人をとらえていくというところは他の作品と共通しているのがわかる。どの作者の時代劇のシリーズでも女武芸者の登場や、気が強くて美人のお姫様の登場はよく見かける。今回は鈴姫と言う名の元5万石の大名のお姫様で薙刀の達人だ。悪家老の悪事を腹に据えかねて、その一味もろとも3名を手打ちにしてしまい、そのためにお家は改易になってしまう。鷹之助はこの姫をもう一度幕府の薙刀の指南役に迎えるべく手を尽くす。もう武士の世界へは戻らぬと決めている気位の高い鈴姫を鷹之助は何度か通って、その心を解きほぐしていく。剣劇シーンも出てくるが、そのやり取りが微笑ましい。遂には、鈴姫は「かくなる上は、何もかもお任せいたしまする。」と心の扉を開く。鈴姫は婿をとれば、お家再興の約定をされるが、それは初恋の鷹之助への別れとなる、ちょっぴりほろ苦いエンディングだ。

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