突きの鬼一シリーズの2巻目 前回は鬼一こと一朗太の殺害を企てたのが、実母と知り、衝撃を受けたところからの続き。鬼一は江戸に向かう途中に助けた裕福な青物商の徳兵衛の店に腰を落ちつける。この徳兵衛が毒キノコを販売し、数名の死者を出した容疑で奉行所に捕らえられる。鬼一と家来の神酒藍蔵(みきらんぞう)が懸命な捜査を行い、その危難を救うことが、今回の中心だ。江戸時代なので人に会って犯人を絞り込んで行くやり方で、これは作者の別のシリーズでも、物語のストーリー運びの同じ手法がとられている。又一朗太が博打を始めた頃の仲間の危難を救ったり、以前助けた美人の壺ふりや、江戸にいる奥方に会ったりと、今後のストーリーの展開にからむだろう、人物も出てくる。今回、服部左門という、定廻り同心と知り合いになる。この同心が鬼一を信頼できる人物と見込み、「徳兵衛は罠にはまったと思う。ついては真犯人探しを願いたい」と頼み込む。本当はこんな頼みを同心がするはずはないと思うのだが、鬼一の活躍により、真犯人を見つけ、最終的に徳兵衛の嫌疑を晴らす。その事を徳兵衛は深く恩に着るのだが、彼とこの実直な同心との二人が、鬼一の江戸暮らしの大いなる支えになるのは間違いないだろう。